おはようございます。今日は文化の日で祝日ですが、てんゆ堂は診療しています。明日4日(土)も通常診療します。
さて、調剤薬局に薬の在庫がない場合、在庫がないことを理由に調剤を拒否をすることはできません。調剤業務に従事している薬剤師は、患者さんが処方箋を薬局に持ってきた時に「正当な理由」がなければ調剤拒否ができない応需義務(「薬剤師法」第21条)が課せられています。薬の在庫がないのは「正当な理由」に該当しないのです。
この場合、調剤薬局は患者さんに薬を渡す努力をしなくてはなりません。まず、処方箋の薬はどこで、どのくらいの期間手に入るか調べたり、医薬品卸メーカーに問い合わせたり、近隣の薬局に在庫がないかも確認しなければなりません。処方元の医療機関近くの調剤薬局には在庫がある可能性が高いかもしれません。
患者さんには「現在、薬局には該当の薬がない」ことを告げ、後日、薬が手に入る場合には「今すぐお渡しができないが、改めてお越しいただければお渡しすることが可能です」と伝えなければなりません。別の薬局が在庫を持っていることがわかれば、その薬局に行くことも提案しなければなりません。
調剤薬局で全ての薬を在庫することは現実的に不可能です。ですから患者さんの了解のもと、処方元の医療機関に同じ効果の別の薬に変更が可能かを問い合わすこともあります。ただし、処方変更は難しいケースもあります。
その理由は、医師からしてみれば医薬品の供給は薬局の仕事であり「薬がないと言われても困る」というのが率直な意見です。薬剤師会などは長年、医薬分業を訴えて来ました。ですから、医師からすれば「在庫がないのは薬剤師側の問題であり『どうしましょうか』と医師に判断を委ねるのは無責任だ」「薬局都合の疑義照会は止めて欲しい」という意見もあります。
多くの開業医は自分がよく出している薬を処方します。他の代替薬や新薬に疎い方もいます。薬剤師側も代替薬がある場合には用量・用法とともに提案することも必要でしょう。患者の手元に残薬があれば、それを使い切るまでに手配して届けるなど、患者が中断することなく服薬できるようにしなければ、真の医薬分業にはならないでしょう。
薬がなければ、薬局の責務として医薬品卸に依頼して急配してもらう、近隣の薬局から購入する、近隣で在庫している薬局を探して患者に紹介するなど、手を尽くす必要があります。このような方法で手配するよりも、手っ取り早く医師に処方薬の変更を求めるのはナンセンスで、医師側としては「まずは、何とか自助努力をして欲しい」というのが本音です。
医師も薬剤師も人です。まずは医師の処方通りに薬をそろえた上で「こういった事情でこれを続けるのは難しいので、こういう処方にしてもらえないか」と伝えてもらえれば、医師としても受け入れやすいでしょう。「在庫がないので処方を変更して欲しい」というのは”薬剤師としての責務を果たしていない”と言われても仕方ありません。
このように、薬剤師は処方箋を応需するために努力しなければなりません。その後、患者さんに、今ここの調剤薬局で受付をするのか、他の薬局に行くか、処方変更をお願いしてみるか、などを提案して判断してもらうしかありません。
大事なことなので、最後にもう一度言っておきます。調剤薬局では「正当な理由」がなければ調剤を拒否することができません。「薬剤師法」第21条により応需義務が課せられているからです。薬の在庫がない、調剤薬局の営業時間が過ぎたなどは「正当な理由」にあたりません。大変な時期だと思いますが「調剤で働く薬剤師さん、頑張ってください!!」。責務を全うする姿を影ながら応援しています!! 〆
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