おはようございます。昨日の雪予報はイイ意味ではずれ。寒さはまだまだ続きます。春物には目が向きません。
さて、厚労省は手術などで使われているパウダー付きの医療用手袋について、製造販売業者に2年以内に「パウダーが付いていない医療用手袋への供給切替えを促します」と供給を切り替えるよう通知しています。これは米国食品医薬品局(FDA)が手袋のパウダーがリスク要因になり得るとして流通の差し止めを発表したことを受けた措置です。抗菌石鹸の件と同じような対応です。
サラヤ株式会社の医療従事者向けサイト「Medical SARAYA」には手術用手袋の使用により引き起こされる有害反応として、天然ゴムに含まれるタンパク質がアレルゲンとなり感作(症状の有無にかかわらず血液検査または皮膚テストが陽性)が成立するラテックスアレルギー(即時型過敏症)。
手袋の製造工程で添加された低分子量の化学物質に曝露されることによるアレルギー性接触皮膚炎(遅延型過敏症)。そして刺激性接触皮膚炎はアレルギー反応ではなく、手袋の着用による皮膚の閉塞や刺激によりもたらされます。症状としては皮膚表層に発赤、乾燥、鱗屑、痒みなどを伴います。
パウダーがもたらす医療従事者への影響としては、天然ゴム製の手袋には着用をスムーズにするため、パウダーが塗布されている場合があります。パウダーの原料であるコーンスターチ自体は天然添加物でアレルゲンではないため免疫機構には関与しません。
しかし、パウダーはラテックス抗原を容易に吸着する(天然ゴム由来の水溶性タンパク質のキャリアとなる)ため、パウダーの手指皮膚への接触や手袋を外したときに空気中に浮遊するエアロゾル化したラテックス抗原の吸入により、アレルギーを引き起こす危険性があります。
また、パウダーは手指皮膚の擦過・乾燥を引き起こし、刺激性接触皮膚炎の原因ともなります。その他、パウダー付手術用手袋は着用した後、手袋表面のパウダーを滅菌水で十分に洗い流してから使用する必要があるため、手間や時間、コストの観点からもデメリットがあります。
患者への影響としては、パウダー付手術用手袋は使用前の洗浄が不十分な場合、パウダーは取り除かれないばかりか、逆に残留したパウダーを強固に固まらせてしまうため、患者が異物反応を起こしやすくなるともいわれており、重篤な場合には虫垂炎の患者が虫垂切除後にスターチ腹膜炎(開腹手術時に腹腔内で使用した手袋のパウダーに対する過敏反応)を起こした事例が報告されています。
英国・ドイツでは10年以上前からパウダー付手術用手袋の使用禁止されていますが、日本においては依然として規制がないためスターチ腹膜炎を完全に予防するためにはパウダーフリーの手術用手袋を積極的に選択することが重要です。
すでに上記のように製造販売業者も注意喚起しています。鍼灸師も治療の際に手袋や指サックを使用している方も多いかもしれません。厚労省からこのような通知が出ていることも知っておきましょう。 〆
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