● 荻窪 教会通り てんゆ堂鍼灸院 「日日是好日」●

    
    東洋医学からみた
    鍼灸治療法
    健康情報
    養生法などなど徒草に
荻窪 教会通り 恬愉堂鍼灸治療院
<< 新型コロナウイルス 伝統医学で考える 2 | TOP | 新型コロナウイルス 伝統医学で考える 4 >>
新型コロナウイルス 伝統医学で考える 3

おはようございます。今週末は3連休です。
しかし人が多く集まる場所は感染が心配です。

さて、感染拡大の一途をたどる新型コロナウイルス感染症。2020年2月20日、新型コロナウイルスの集団感染が起きたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客だった80代の乗客男女2人の死亡が確認されています。厚労省によると、死亡した女性には持病がなく、2月5日に発熱し6日に下痢症状を呈して船内の医療機関を受診。感染を調べる検査と外部の医療機関への搬送が行われたのは12日だった。搬送日には酸素投与を受けており、既に状態が悪化していました。新型コロナウイルス感染の陽性が出て1週間で死亡しています。死亡した男性には、狭心症の治療歴と気管支喘息の持病があり、10日に発熱し、こちらも陽性が出て1週間で死亡しています。

このような感染症を伝統医学では温疫(うんえき)や温病(うんびょう)と捉えることができます。これらは細菌やウイルスなどによる急性・伝染性・流行性の疾病の総称と捉えることができます。

清代初期には痧病(さびょう)の専門書である『痧脹玉衡』(さちょうぎょくこう。1675年刊)を郭志邃(右陶)が撰著しています。痧病は急性・伝染性・流行性のいずれかを含む疾病の総称であり、多彩な症状を呈しますが、特有の症状はなく重篤化しやすい傾向があります。郭氏が確立した痧病は温疫や温病と傷寒の概念を取り入れて郭氏独自の理論も組み込まれたハイブリット型ということもできます。


痧症の病因は外感(暑気・時行不正の気・伏寒伏熱)および疫邪(匍ぁΡ峙ぁ穢気)であり、これらを感受し発症します。外感は温病に関わりますが、広義の傷寒に温病は含まれます。疫邪は温疫の病因と共通します。現代西洋医学では、熱性疫病、皮疹、麻疹、一般的な暑熱病症、霍乱、インフルエンザ、急性胃腸炎、中暑(熱中症)、ショックなどが痧病に相当すると考えられています。

痧病も急性・伝染性で死に至る疾患です。『痧脹玉衡』痧症発蒙論には「痧有為真心痛、亦朝発夕死、夕発旦死」とあります。要約すると「痧病には真心痛があり、朝に発症して夕方には死に至り、夕方に発症すれば明朝には死亡する」とあります。真頭痛とは、『霊枢』厥病に「真頭痛、頭痛甚、脳尽痛、手足寒至節、死不治」とあります。要約すると「真頭痛は、甚だしい頭痛で、脳も痛み、手足が冷たく、これが肘や膝に至れば、死症で不治である」とあります。真頭痛は急性の激痛性の頭痛で悪寒、吐き気、嘔吐、手足の冷えなどを伴います。

また序には「憶昔癸未秋、余在燕都、其時疫病大作(中略)日死人数千(中略)此痧也」とあります。要約すると「1643年、北京で疫病が大流行した。死者は1日で数千人にも上った。これは痧病である」とあります。このように急性・伝染性で多彩な症状を呈する新型コロナウイルス感染症に痧病は類似しています。

そして診断・治療では、温疫概念を取り入れながらも『傷寒論』が重視する脈診を取り入れるなど双方の有益な部分を採用し独自の論理を展開しています。 時代の変遷とともに痧の疾病概念や治療法は洗練されていきました。しかし清代末期には多種の感染症に難病も内包され痧病名が膨れ上がります。また温病のような弁証論治も確立されず、旧来の理論と治療では効果も上がらず衰退しました。さらに近現代における細菌学の確立により、広範におよぶ痧の疾病概念は時代にそぐわず、省みられる必要がなくなり痧病は衰退していきます。


しかし現代でも痧病の治療法のひとつである刮痧(かっさ)は民間療法として定着しています。また匍い覆匹留崋戮血分に入り痧毒となり瘀滞し、膝窩・肘窩に深青色・紫色などに皮静脈が怒張した痧筋(さきん)がみられる場合は、この痧毒を排泄するために微量出血させる治療法は、現代でも少数民族の間で民間伝統医療として存続されています。

痧病に関して興味のある方は、拙論「痧病と痧筋の概念について」(全日本鍼灸学会雑誌 69(1), 26-40, 2019)、「『痧脹玉衡』における痧症の診断に関する文献研究―脈診を中心として―」(伝統鍼灸46巻3号(2020年春)掲載予定)を参照してください。   つづく・・・


<関連記事>
・新型コロナウイルス 伝統医学で考える 1
・新型コロナウイルス 伝統医学で考える 2 
・新型コロナウイルス 伝統医学で考える 4  

 

| 古典医書 歴史 制度 | 10:15 | comments(0) | - | ↑PAGE TOP -
コメント
コメントする